病気や障害のある子どもたちと家族のためのトータルケアを考える(ADR編)


チャーミングケアという、病気や障害のある子どもたちと家族のためのトータルケアを考案し推奨しだして早2年。
きっかけは、息子が2016年に小児白血病に罹患したことが起因している。
初めはがんの子供の外見ケアに関して、大人には「アピアランスケア」という外見上のケアに対する重要性も包括的に治療に取り組んでいく考え方があるのに、どうして子どもには浸透していないのだろうか?という疑問から、メンタルケアや家族のためのケアにまで目が向くようになり、周辺にある様々な課題を問題提起するようになった。

しかし、我々の掲げているチャーミングケアは、具体的にどんなものを指すのか?という部分は、これから研究していかねばならないジャンルになっており、そのためにポータルサイト「チャーミングケアラボ」を立ち上げるに至った。
2018年にサイトを立ち上げ、翌年には一般社団法人チャーミングケアとして活動を本格化する。
主に文章での発信をメインとして、ワークショップやオンライン座談会などを行いWEBメディア「ハフポスト」へのブログ連載の影響もあり、たくさんの方の支援や協力を得られるようになった。
2019年末、物販事業を別会社「チャーミングケアモール」として立ち上げることを機に、少し活動をスローペースにしてきたのだけれど、何か継続可能な方法はないものか?と考えたとき、無理なく続けられる「音声配信」という方法に辿り着いた。
毎回、なんらかの形で我々の考える「チャーミングケア」関わりのある様々な職業の方をゲストに迎え、お話を聞くというスタイルで毎週日曜日に音声配信を行なっている。

初めてのゲストは、家族のためのADR推進協会を運営されている元家庭裁判所調査官の小泉道子さんにお話を伺った。
小泉さんは、チャーミングケアで過去に開催した、

親亡き後問題の成年後見人

にて専門家として参加していただいた経緯がある。
座談会では、小泉さんを含め行政書士・司法書士・弁護士というそれぞれの専門家と当事者家族がオンラインスタイルで話をした。


小泉さんの経歴が元家庭裁判所調査官という全国的にも少数の職種で、かつ成年後見人を選任する側の仕事をされていたというのが、当事者家族の方にとってとても有益な情報提供に繋がったのではないかなと感じている。
そんな小泉さんは現在ADRという訴訟手続によらない紛争解決方法で、主に離婚問題について尽力されている。小泉さんの特徴は、「子どもを主軸に考える」ところで、その点がチャーミングケアの考え方とリンクする部分だ。



小泉さんは、音声配信でこう語ってくれた。

今回のコロナ禍で、戦後初めて家庭裁判所の調停機能が一時停止されました。
コロナ禍の自粛生活で、家族みんなが家の中にいて家族間の問題が起こりやすい最中、界隈はパニックになりました。
一方で、ADRは民間の仲裁機関なので、オンラインで面談が可能です。扱う件数自体はグッと増えている感触があります。
行政書士の業務は多岐に渡ります。
ですがその中でADRを取り扱おうと思ったきっかけは、家庭内の紛争の中で「子どもの存在」の大きさに気づきました。
一番傷つきやすい存在であると同時に、子どもの生きる力強さみたいな部分も感じるようになりました。子どもの存在を意識しながらADRに関わるようになると、離婚するご家庭の方が一緒に子どもについて前向きに話し合いをするようになりました。
チャーミングケアの対象となっている病気や障害のあるお子さんは、立場的に弱く守ってあげないといけない存在ではあるのですが、一方でそのお子さんの影響力や持っているパワーというのはとても大きいですよね。
子どもを産み育てるというのは、結婚生活においてたくさんのハッピーも運んでくるけれど、たくさんの波紋も起こします。

一般的に離婚が起きやすい子どもの成長年齢は、0−2歳がトップ、その次に3−5歳と言われています。
そこにチャーミングケアの対象になってくるような病気や障害のあるお子さんとなってくると、もっと多様な問題が入り組んでくるのは、想像に難しくないかと思います。
そして、ご夫婦間だけではなくて、時にはお子さん自身が独自の考えを持っている場合もあるので、「子どもの存在を中心に」考えるADRというのは、わたしのテーマだなと感じています。

子どもの人権(知る権利と意思表明権)を考える

小泉さんの話を聞いて、わたしは自分の子どもの事と、わたし自身の子ども時代の事を回顧した。
わたしの息子が入院している際に、子供同士の話題を耳にしたことがある。ある子どもが、同じように闘病中の年上の子に相談をしていたのだ。

自分の病気は先生や親から説明されているよりもきっと重いと思う。
自分のことだからわかっているんだけど、それが親にわかってしまうと、親が悲しむので言えないんだと。
重い病気の治療をしている子どもが、体調も精神状態も決して良好ではないなか、親のことをこうも気にかけるものなのかと、カーテン越しに聞きながら涙が出たのを思い出す。

そして、同時に自分自身の子ども時代の記憶も思い出した。わたしの父親は中学の時に蒸発していまい、その後も働きながら高校・大学と進学した経緯がある。
蒸発の経緯などについて、子どもではあったけれどほとんど理解していたのだけれど、当時一緒に暮らしていた母親はわたしが理解している事を認識していなかった。

親の思い子知らずというが、その逆もあって「子の思い親知らず」もあると、少なからず経験者のわたしは感じている。

子育ては誰の役割?世界の子育て感

日本人の文化的な問題も少し起因しているように感じる。
日本では子どもは親の庇護のもとに存在していて、子どもの人権や意思表明に関する部分への認識は薄いように感じる。
その話で言うと、息子の入院中に中国籍のお子さんが入院していたのだけれど、そのご家族の付き添いにお母さんの姿はなかった。
ほぼおばあちゃんが付き添いをしており、夜の寝泊りはお父さんと交代制をとっており、お母さんは働きに出ていたのだ。
日本人の感覚からしたら、「なぜお母さんが付き添いをしないんだ?」と思うかもしれない。
しかしこれは台湾に一時期在住されていた小泉さんからのご意見でも明らかになったのだが、中華圏の子育て感は「できる人がする」という考え方なのだ。
若いお父さんやお母さんは働けるのだから、外で働けばいい。
もう働く事を積極的にしていない祖父母が子どもの面倒を見れるのであれば、見るのがごく当たり前の考え方なのだそうだ。

わたしもそのご家族にお話を伺った当初、ちょっとしたカルチャーショックに陥ったが、ご家族の子どもに対する接し方が子どもを子ども扱いしていないというか、幼少期の子どもであっても「人として」接しているのが見て取れた。
子育てに正解はない。しかし、子どもの人権を尊重し、人として接する価値観も子育てを円滑に進めていくヒントなのではないかなととても感じた。

●小泉さんのインタビューは、チャーミングケア公式noteでアーカイブを聴くことができます。ポッドキャストでも同じ内容を配信しているので、是非聞いてみていただけたらと思います。