働くを諦めないー病気や障害のある子どもを育てる母親たちの働き方改革ー

子どもの障害をきっかけに、インクルーシブ学童施設を設立!横須賀の肝っ玉母さん

前回は病気や障害のある子どもを育てる母親たちの働き方改革を実例取材やわたしの行なっている事業での事例などもふまえて紹介した。インクルーシブ学童やインクルーシブ美容室などとても素晴らしい取り組みだった。
しかしながら、インタビュー取材した事例は、本当に稀な事例だということも知っていただきたい。病気や障害のある母親が働く一歩を踏み出すのは至難の業なのだ。今回は、実際にわたしが子どもの病気をきっかけにキャリアストップを経験し、新しい働き方をするまでの経緯と、「就労意欲」自体を支援しなければ働く一歩を踏み出せない母親達の事例を紹介する。

子どもの病気、キャリアストップ、自分に合った働き方が起業だった

私の息子は2016年に小児白血病に罹患したが、それ以前にわたしのキャリアストップのタイミングがあった。
遡ること12年前、長男の出産の際に切迫流産と診断され長期入院の末、切迫早産での出産。
生まれた長男には心疾患があり、その後1ヶ月をNICUで過ごし、それまで勤めていた広告会社への復職は難しいと判断した。
私の場合は、その後立て続けに子どもを妊娠出産したので、再就職のタイミングを完全に失ってしまったという点と、居住している地域が郊外であったため通勤時間がネックとなり、幼稚園に通わせていたことも相まって働くことが現実的ではなかった。
ただ、結婚前までにかなりバリバリと働いていた自分が嫌いではなかったし、いつか必ずまた自活できるだけの収入を得たいという希望は捨てきれず、自分で事業を立ち上げる原動力にもなった。

もっというならば、経済的余裕は精神的余裕に直結する。夫婦であったとしても、自立した経済状況を自分自身で担保できないことに対する不安が大きかった。

現実的には働く事を諦めざるを得ない状況ではあったけれど、自分の中では決して諦めていなかったのだ。
そこにずっとあったのは「就労意欲」だ。
働くことが自分の承認欲求を満たすことを自覚していたし、然るべき収入を得られるだけの自信もあったのだ。
*ここでの事業立ち上げはチャーミングケアではなく、WEB制作や企画などを請負う、企画事務所のことを指します。
だが、その就労意欲自体をサポートしなければなかなか働く一歩を踏み出せない母親達もいる。

就労意欲自体に支援を 士業の目線からの支援事例

取材を進めていく中、ひとり親世帯の「就労意欲」という部分にスポットを当てて支援を行なっている団体とご縁をいただいた。大阪に所在を置くNPO法人ハッピーシェアリングだ。

代表の築城由佳さんは病気や障害のあるなしに関わらず、一人で子どもを育てているシングルマザーの就労支援事業なども行なっており、母親としてだけでなく一人の人間としての自立を促している。

社労士でもある代表の築城さんと、同じようにシングルマザーへの支援事業に詳しい行政書士の小泉道子さんに士業からの目線もふまえてお話を聞いた。
ADRという手法で、離婚問題を解決していく事業を行なっている小泉さんは、たくさんの離婚相談を受ける中で、病気や障害のあるお子さんを抱えたお母さんとシングルマザーの方というのは、同じように「子の介護」によって就労の機会を失いがちになる面で似ていると語った。
ただ、シングルマザーに関しては、それ相当の手当や助成があり、「生きていくための最低限の食費を稼ぐために、身を粉にして働かねばならない」状況ではないというのが実情のように感じるそうだ。
「例えば、離婚相談などの中で先行きのことを見越して就労支援の話を事前に進めても、『余計なお節介』と取られてしまう場合もあります。
日本には、セーフティーネットとして生活保護の制度があります。
例えば母子寮などを活用して生活保護を受けていると、パートや派遣で働くよりも保護を受けているときの方が収入が多い場合もあるのが起因しているように感じます。」

と語った。

そして築城さんは
まず目先の生活だけでなく、自分の人生設計においての見通しをたて、社会からの承認欲求を持たせるという「就労意欲」を支援する必要があると語り、そこに「子の介護」という負荷がさらにかかると、どうしても働くという事に舵を切れない母親が多いと語った。
「私の運営している団体の相談の中でも「子どもの障害」というキーワードが上がってくる事があります。私も経験していますが、子どもに病気や障害がなくても、一人親になって子どもを養育していくことというのは相当に大変なことなのですが、さらに障害受容ができない保護者さんがいらっしゃるのが現状なのです。」

就労意欲を支える側を増やすことも必要

そして、子どもを育てるために離婚後も面会交流をサポートする第三者支援機関は、首都圏など都市部には多いが地方ではまだまだ足りておらず、支援機関がない県もあるほど。

首都圏などの都市部だけでなく地方にも体制作りをしていく必要性があるのではないかと築城さんは語った。

コロナ禍が後押しをしている、最新の「新しい働き方」


就労意欲の問題は確かに深い問題だと感じる。しかしチャーミングケアの行なっているアンバサダー事業のように、ライトに働くという方法であれば、気負いなく社会参加の一歩を踏み出せるのではないかと感じる。
もちろん私のように元々就労意欲が高く、働くことに承認欲求を求めているタイプは、しっかりとした収入を得なければ、働いている実感も得にくい。

私の今の働き方はどうかというと、この7月から運営している一般社団法人を非営利型にしたことをきっかけに、元々経験がある制作ディレクション関係の職種と、20年後を見据えて長く働くことができそうな幼児教育の講師としても就労している。
自宅と近郊に借りているオフィスとを行ったり来たりして、フルタイム&フルフレックス、フルリモートというスタイルで就労しメインの収入を得て、自分のライフワークにもなっているチャーミングケアの事業と両立をはかっている。

そしてそのオフィスを中学1年生になる息子の趣味や勉強の場所としてシェアをし、お互いがどのような影響を受けるかという実験にも挑戦している。
ランサーズ株式会社が提供している「新しい働き方ラボ」というコミュニティで、新しい働き方の研究員として親子で活動しているのだ。

そのことに関しては、8月21日に開催した下記イベントでも説明をした。
#働くを諦めない ― 病気や障害のある子どもを育てる母親たちの「働き方改革」―

理想の働き方を実現するのに12年

時間はかかったけれど、自分の生活スタイルにあった働き方がようやくできるようになっている。キャリアストップをして、こうだったら働けるのにと思い描いてから12年かかかった。
一方で、自分の事業以外での就労を決めるのに、3ヶ月間で100社以上に履歴書を送り、失意の日々を送ったことは記しておきたい。
子どもに病気や障害がある母親が、キャリアストップの後にそれなりの収入を得て働き続けることは決して容易ではないのだ。

#働くを諦めない 病気や障害のある母親たちの働き方改革

なんとなく大丈夫そうに思われがちな私でも、正直なところフルリモートという部分を差し引いたとしても、40歳を過ぎて新しい仕事をするということはとても大変だ。

何が大変かというと、社内ルールを把握する自分自身のスピード感が20代の頃と比べると明らかに劣っており、できない自分に対しての劣等感が募るのだ。

いくら自分で事業をしていたとしても、他社とでは勝手が違う。働くということを諦めていなかった私ですらその状況だ。実際に全く働いてこなかった人に関しては、もっと困難な状況になることは想像に難しくない。

今後わたしは、この病気や障害のある子どもを育てる母親たちの働き方改革に関して、自分自身で実証実験をしながら、アンバサダー事業やこれから始めようとしている支援をする人材育成のための研修事業において、もっと深く関わっていきたいと考えている。

#働くを諦めない 母親たちが自分らしくいるために、広げていきたい考え方だ。